第5回なんごうシーカヤックマラソン



シーカヤックマラソンのイベント模様は20年で変わってきていて、参加艇の形は「シーカヤック」と「アスリートカヤック」にはっきりしています。私も以前まではシーカヤックマラソン用の特別仕様艇を作っていました。最初のうちは好成績をあげていました。しかし残念ながら世界のレーシングメーカーのデザインする素晴らしい「アスリートカヤック」に完全に負けたことを実感しました。そのとき作った艇にも、乗ってくださった人にも、悪いことをしてしまったと申し訳ない思いでいます。そんな思いでレース特別仕様を作るのは断っていて、シーカヤックメーカーらしくシーカヤック作りに専念しています。
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 きのう宮崎の「南郷シーカヤックマラソン」に行ってきました。勝手におせっかいをやきながら会場をぶらぶらしていただけです。
 風速5m~8mで厳しい状況だったので、コース変更して湾内のコースになるだろうし、そうするべきだと顔見知りの主催者スタッフ達になんとなーくうながしていましたが、内海育ちの私と違って、地元スタッフ達は、太平洋のうねりが入る南郷の、この海で生まれ育っています。
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 「こんなもの普通ですよ。通常のコースでやります。30人ぐらい沈するでしょう」。
 松尾実行委員長のきっぱり宣言でスタート用意が始まった。
 無責任でいられる私は、これは面白くなるぞと喜んだ。
結果は20人沈して30人ぐらい回収された。沈しても完漕した人もいたが、風で進まなくなって漕ぎ切れなかった人もいる。
ざっと16kmのコースで114人の参加。主催者が用意したレンタル艇の参加者が50人ぐらいもいたくらいで、その人たちは初心者のはずなので大変だったと思います。遅い人は4時間以上も漕ぎ続けてゴールしてくるので、きっと苦しさで涙ながらのゴールかと思って見るとみんな笑顔で喜んでいるようでした。私も初心者時代を思えば、うねりと沈の恐怖でリタイヤしていたでしょう。
 みんなでやると怖くないレスキューも出ている。おもいきって普段は漕げない状況の海を体験でき楽しむことが出来る。そんな大会は意義があると参加者からも聞きましたし、私も思いました。
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 沈艇が続出するなか私は笑って楽しみながらシーカヤックでレスクキューの手伝いをしながら見ていました。
 百人ちょいが一斉スタートして300mも行くと最初のうねりゾーン突入、上位は猛スピードで出て行く。と同時に後続集団はあたふたしている人がいる。5艇6人が沈。
 手前の沈艇に着け再乗艇さするも再び沈。本人もあきらめて最初の脱落。ジェットに乗せてもらって帰った。
 また次の沈艇に着けると、「先のほうで友人が沈しています。彼を先に助けてやってください」と言う。見ると脱艇して浅い岩にへばりついているカヤックが小さなうねりにチラチラ前に見える。誰かが行っているようだ。「彼は大丈夫ですよ。貴方のを起こしますから、しがみ付いていては起こせませんから、軽く後ろにつかまって。」、、「僕は全く泳げないんです。離せません」、、「しかたないですね乗るのはあきらめますか」、、「はい。」、、ジェットの後ろに乗り移ってもらった。カヤックは私が浜までひっぱった。ジェットはカヤックをひっぱるのに慣れていないけどジェットに頼めばよかった。カヤックをカヤックでひっぱて帰るのには思った以上時間がかかった。
再び後部集団が見えるところまで追いついた。7艇目、もう2艇が沈脱したのかすでに回りこんだ岸に上がってるのが見えた。沈する人は早くもしてしまっただろう。あとの人はたぶん大丈夫だろう。1番のうねりゾーンは抜けたし。悠長にビリグループの知り合いの女性を励ましたりして見る。そろそろベテランと言ってもいい彼女のはずだ、漕いでいるのにこんな遅いはずはない。反対側に回ってみると、ウレタンのパドルフロートを荷崩れしてふわふわ側面にひっぱて抵抗になっているようだ。しばらく意地悪して馬鹿な女だと笑ってみていた。このまま行こうか、気がつかないもんだな。先は長いかわいそうになった。愛情ちょっぴり、横付けしてセット位置に固定してやった。後でわかったことだが、この時はすでに彼女は途中沈脱して近くの浜に自ら上がって再乗艇して漕いでいた。シングル女子10人中9位であったと思うがどんどん抜いてゴール寸前で4位にまでなった。美味しい特産マンゴーは3位まで公平に称えられて贈られる。4位は残念ながら笑える(おめでとう、うらちゃん頑張ったねお馬鹿1位だね。)
 (本命お馬鹿は5度の沈にもめげずジェットに救われたり岩場に打ち上がったりしながらでも漕ぎ続けていた彼だったけれど最後に体中擦り傷で力尽きた。途中岩場の瀞場にカヤックを泳いで引いて再乗艇して出て行く姿は見て感動した。カッコよかったよ。奄美できっとリベンジできるよ。)。
 おかげ様で以前サーフカヤックの仲間だったよっちゃんが女子3位でよかったね。ハヤテでロールが出来なくてそれが悔しいらしい。手を入れると格段にロールパフォーマンスが良くなるので、二人の秘密でやってあげたいね。
 ダブルのバウに乗ったこの頃ますます美しくなってゾクゾクしてしまうユキちゃんは、シングル清水青少年の背中こそ見たものの、その意味、最強男のダイナマまで後ろに従えて漕げてダブルの1位は気持ちよかっただろうね。なんか悔しいぞ。
 今回も千葉からやってきてくれて、相変わらずのチャーミングな林さん、胸に下げた竹の根か筍から削りだされた琥珀色の薄い小さな牛角形のマイカップで前夜祭のコーナー地元焼酎のボトルが10本も並ぶほとんど全てを美味しそうにニコニコと利き酒されている。私は思わずそんな彼女の顔に近づけて、林さんほんと可愛いねと囁いた。そんな私のスケベ心を見透かして彼女はバイバイとにこやかに言った。
 シーカヤッカーの女性は私がちょっかいを出したい人がいっぱいいます。

 水野義弘